読書という体験を豊かにするために(読書レポートの書き方)
町村敬志・2020
1 まず手始めにすることは
●背景を知る
- 著者はどのような人物か。経歴・他の作品、学問的背景を知る。
- 著者は18〜20歳を、どのような時代に、どのような場所で、過ごしたのか。 もっとも多感な時期が人間を形づくります。
- 序論や「はしがき」「あとがき」から、執筆の動機、問題意識、出版するまでの経緯などを確認してみよう。
- 出版年(原著)から、それが書かれた時代の出来事を想起して、作品との関係を推測してみよう。
●論点を探す
- 読む前の自分の関心、期待、本の印象を再確認し、読後にそれを再検討することで、関心や印象のズレがどこにあったかを考察する。
- 初めて知った事実や主張を整理する。なぜ著者はそれを主張するのかを考える。
- 著者の主張を補強する事例や議論、あるいはそれとは異なった事例や議論はないだろうか。自分の知識を総動員しながら、論証が確かかどうかを検討する。
- タイトルは内容を表しているか。著者のねらいはどこまで生かされているのだろうか。
2 技術を磨こう
・題名や広告などから、初めに抱いた関心や期待、イメージを常に意識しながら読む。
・奥付、参考文献などから、本書および関連する図書の書誌情報を把握する。
・付箋紙をつけたり、ノートをとって、論点を整理する。
・用語の意味や著者の表現、関連する事例の確認のため、索引を利用する。
・重要な主張やポイントは、「 」にくるんで、そのまま引用する。
・読書レポートであっても、必要に応じて、参考文献や注をつける。
・同じ本を読んだ他の人と意見交換する。
3 さらにもう一歩進むために
- 論理構成の緻密さ、史資料やデータによる実証度を検討する。
- 先行する研究や他の類似図書と比べて評価する。
- 著者の問題意識が形成される歴史的・社会的・個人的背景や、著者の価値観、イデオロギーを検討する。その背景と作品との整合性を批評する。
- 他の人の書評と自分の読み方を比較する。書評は、ホームページ上の「書評」サイトのほか、Social Sciences Citation Index(SSCI), 『雑誌記事索引』『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』などから探す。
4 読書レポート・・・次のようにはならないように!
・論評よりも要約になってしまうこと
・書物全体の論旨を外れて、部分的なことに終始すること
・常識的なこと、一般的なこと、私的なことばかりを論じること
・書物のメリットや批評を書かずに、自分の考えだけを論じてしまうこと
・読まないで書くこと
● 本文作成に当たっては、故・辻内鏡人先生の作られた「読書レポートの技法」を参考にさせていただきました。